2016/05/31

自己開示と自己呈示。人間関係を形成・調整するコミュニケーション。

[知識]

他者とのコミュニケーションの中で、お互いに自分のことを話題にすることは多いものです。

そのとき、自分のことを正直に話すこともあれば、ごまかして話すこともあります。

前者を自己開示、後者を自己呈示といいますが、これらには、人間関係を形成したり調整したりする機能などがあります。

ここでは、それぞれの機能や効果について具体的に記載していきます。




第1章:自己開示とは。

自己開示とは、自分のことを相手に正直に伝えることです。

自己開示の機能には、自分自身に対して様々な効果をもたらす個人的機能と、自分と相手との関係について様々な効果をもたらす対人的機能の二つがあります。

1-1:個人的機能。

(1)感情浄化機能

辛い気持ちや不安な気持ちなどをずっと自分の心の中だけにとどめておくと、その重みに苦しくなり、いつか耐えきれなくなることもあります。

そんな気持ちを他者に聴いてもらうだけで、心が軽くなることもあります。

不安が消えたり悩みが解決したりするかどうかは別として、自己開示をして気持ちを吐き出すことによって、感情浄化(カタルシス)が生じるわけです。

(2)自己明確化機能

僕たちは、ある事柄に対しては明確な意見や考え方をもっているけれど、その他の多くの事柄に対しては曖昧な意見や考え方しかもっていないものです。

でも、そうした事柄に対して質問されたり、自己開示をしながら話したりしているうちに、当初は曖昧だった意見や考え方が整理され、明確になってくることがあります。

また、気持ちに関しても、モヤモヤしていたものが明確になり、それだけでスッキリすることもあります。

(3)社会的妥当化機能

自分の意見や考え方は主観的なものであり、客観的に見ることが難しいことも多くあります。

そんな自分の意見や考え方を相手に話すことで、相手から客観的な意見や考え方を聞けたりする場合もあります。

それによって新しい視点が得られたり、多くの人の意見を聞くことで社会的な妥当性がわかったりもします。

1-2:対人的機能。

(1)二者関係の発展機能

僕たちは、信頼できる相手や好意を抱く相手にこそ、隠していた自分のことを打ち明けます。

そんな自己開示は、相手に対して、信頼していることや好意をもっていることを暗に伝えます。

信頼されているとか、好意をもってくれていると感じた相手は、自然と自分に対して好感や親近感をもってくれるので、二者関係は発展していきます。

また、自分が隠していたことや秘密にしていたことは、社会的・心理的に価値あるものともいえます。

そのため、自己開示という社会的報酬を受け取った相手は、価値あるものをもらったから同じように価値あるものをお返ししようという返報性規範に基づいて、自己開示のお返しをしてくれる場合もあります。

これが繰り返されると、自己開示の交換が進み、さらに二者関係は発展していきます。

(2)親密感の調整機能

どんな二人の間にも、その二人に固有の距離感や、親密さのレベルといったものがあります。

上述のように、自己開示によって二者関係を発展させることはできますが、あまりにも自己開示しすぎると、距離感や親密さのレベルが均衡を失ってしまうことがあります。

また、あまり親しくない相手に内面的すぎる自己開示をすると、人間関係が崩れてしまう可能性もあります。

自己開示のタイミングや量や内容を調整することで、距離感や親密さを調整することも大切です。




第2章:自己呈示とは。

自己呈示とは、自分のことをごまかして相手に伝えることです。

これは必ずしも悪いことではなく、ごまかして本当のことを言わないことは、トラブルを避けたり、相手とうまく付き合っていくためのソーシャルスキルともいえます。

また、僕たちは、本当の気持ちを隠していたり、うまく話せずにいたり、言わないと決めていることの方が多いものです。

自分が傷つきたくないという気落ちもあるし、相手を傷つけたくないという気持ちもあるかもしれません。相手を守るふりをして、自分を守っていることもあるかもしれません。

この章では、様々な自己呈示について記載していますが、自分の行為や言動を否定的に捉えるのではなく、自分を新たな視点から見たり、客観的に見たりするきっかけにしてもらえると嬉しいです。

2-1:防衛的自己呈示。

相手から否定的な印象をもたれそうなときに、印象を改善したり自分を守るために行う自己呈示を、防衛的自己呈示といいます。

具体的には以下のようなものがあります。

(1)弁解:自分と否定的な結果との関係性を弱めて、責任を逃れたり、自分が傷つくのを回避する行為。

(例:「酒に酔っていたせいで、つい悪口を言ってしまった」と、酒のせいにして悪口の責任を回避する。)

(2)正当化:部分的には責任を認めるけれど、否定的な結果を過小評価させる行為。

(例:「作業が間に合わなかったのは申し訳ないけれど、多くの作業を与えすぎるのも悪い」と、間に合わなかったという結果を過少評価させる。)

(3)謝罪:自分の行為が避難するに値すると認めるふりをして、責任を取ると謝るふりをする行為。

(例:演技で頭を下げて謝るふりをする。)

(4)セルフ・ハンディキャッピング:否定的な評価を受ける可能性があるときに、前もってハンディキャップがあると言っておいたり、実際にハンディキャップをつくっておく行為。

(例:「部活が忙しくて、最近あまり勉強できなかった」と、部活をハンディキャップとして主張する。)

(5)社会志向的行動:否定的な行動が偶然であったと思わせるために、社会的に良いとされている振る舞いを見せようとする行為。

(例:後輩をいじめているのを先輩に見られた途端に、親切な行為に切り替え、いじめはふざけていただけだという印象を先輩に与えようとする。)

(6)メタ釈明:釈明しないことを釈明する行為。

(例:「時期が来たら話すつもりだけど、今はまだその時期ではない」と、話さないことを弁解し正当化する。)

2-2:主張的自己呈示。

相手から報酬を引き出したり、肯定的な印象を得るために行う自己呈示を、主張的自己呈示といいます。

具体的には以下のようなものがあります。

(1)取り入り:自分は好感がもてる人間であるという印象を与える行為。

(例:上司が見ているときだけ忙しく働いているふりをする。)

(2)自己宣伝:自分は有能な人間であるという印象を与える行為。

(例:準備が不十分でも、「僕なら仕上げることができるので任せてください」と主張する。)

(3)示範:自分は立派な人間であるという印象を与える行為。

(例:「被災者のために募金を集めています」と、嘘をついて詐欺行為をする。)

(4)威嚇:自分は危険な人間であるという印象を与える行為。

(例:「僕のバックには暴力団がついているんだぞ」と、嘘をついて威張る。)

(5)哀願:自分はかわいそうな人間であるという印象を与える行為。

(例:「僕は力が弱いから重たい荷物は持てない」と主張して、他の人に運ばせる。)




まとめ。

ここでは、自己開示と自己呈示について、その機能や効果を記載してきました。

自己開示も自己呈示も、うまくコミュニケーションの中に取り入れることで、相手との関係性を発展させることもできますが、相手やタイミングを間違うと関係性を崩壊させてしまうこともあります。

自分の状況や相手との関係を客観的に捉えて、コミュニケーションに取り入れていって頂けると幸いです。

また、自己開示も自己呈示も、コミュニケーションの必須条件ではありません。

コミュニケーションの一要素と考えるのが良いのかなと思います。

 

最後まで読んで頂きありがとうございます☆

誰にも言わないと決めていることがあってもいいよね。




【関連ブログはこちら】

会話が苦手な人のためのコミュニケーションの技術(基礎技術編)。

会話の不安を解消するための心の準備。

職場のコミュニケーションのストレスを解消して楽しく仕事をする方法。

ブログの感想・お問合わせはこちら。