2016/11/11

シェアハウスの一冊『博士の愛した数式』小川洋子

[ シェアハウスの本たち ]

数学は、日本では理系科目とされているけれど、海外では文系科目とされているところも多いらしい。

また、数字や公式は、人によって発明されるものではなく、人の存在よりも前から存在しており、単に人によって発見されるものらしい。

そう考えると、確かに文系科目に分類しても良い気もしてくる。

これは数学を愛する僕の後輩から聞いた話で、その後輩はいつも数学の話題となると熱く語り出す。

普段から、街中で見かける数字が素数かどうかを判別したり、人の誕生日を聞いたら四則演算を使って数式として成り立たせたくなったりするらしい。

そんなふうに何か特定の分野にだけやたらと詳しいとか、その分野の話になると急に熱く語り出す、という人が僕は大好きだ。

その語りの熱量がとても魅力的に感じるのだ。

この物語の博士も、数学に対して強い情熱をもっており、誕生日や靴のサイズなどの数字を見ると、数学的に解釈して語り出す。

でも、数学以外のことに関しては、ほぼ無関心で、人ごみを嫌い、家の外にもほとんど出ようとしない。

博士の家に家政婦としてやってきた「私」は、数字ということばしかもたない博士となんとかコミュニケーションを取ろうとする。

また、博士は記憶が80分しかもたないので、博士にとって「私」は常に新しい家政婦となってしまう。

でも、ことばや記憶を超えて、博士と「私」の関係は強くなっていく。

やがて「私」の息子も加わって、ぎこちないけれど、少しずつ三人で世界を共有できるようになっていく。

不器用な人たちの、とても優しい物語です。

 

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