2016/10/05

シェアハウスの一冊『8 stories』大西麻貴+百田有希 / o+h

[ シェアハウスの本たち ]

建築と人は似ているなぁ、とたまに思います。

建築は、その形ができあがると、そこに人が住み始めたり、多くの人が集まるようになったり、家具が置かれたり、雨や風を受けたりするようになります。

そして、時が経つと、住む人や集まる人が変わったり、置かれている家具や壁の位置が変わったり、隣に新しい家が建ったり、隣の家の日陰になったり、逆に隣に日陰をつくったり、雨や風を受けて壊れたり、補修されたりしながら、次第に年をとっていきます。

これは、人が生まれた瞬間から、色々な人と出会ったり、何かを覚えたり、何かを忘れたり、成長しながら死に向かっているのと似ているように思います。

また、建物に住む人や建物の形を考えることは、自分自身について考えることと似ているし、隣の建物との関係や、周囲の環境への影響を考えることは、人間関係について考えることと似ています。

建築本の面白さの一つは、建築をつくる過程で考えられた建築に関する事柄だけでなく、建築家自身の価値観や、建築家が歩んできたストーリーにも触れられることだと思います。

この本では、二人で設計活動をしている大西さんと百田さんが体験してきた、8つの作品や活動にまつわるストーリーが語られます。

そこから、物語や自然を愛する二人の思想が感じられるし、かわいらしいイメージや模型を見るだけでも楽しめます。

色々な物事に対する新しい視点も得られる、刺激的な一冊です。

***

僕が初めて大西さんの作品を見たのは、大学で建築を勉強していた頃でした。

建築系の大学では、卒業時に、「卒業設計」というそれまで学んできたことの集大成というべき作品を設計します。

多くの場合、卒業設計においては、課題やテーマは与えられず、何をつくるのか、というところから自分で考えることになります。

どう課題を設定するのか、それに対してどんなアプローチをしていくのか、そもそも課題を設定するのか、というように完全に0から自分で考え、決断をしながら設計していくというプロセスなのです。

自由という難しさ。

手がかりのない不安。

自分だけが進んでいないような焦り。

考えていくうちに迷宮に迷い込み、最初にやりたかったことってなんだっけ、とそれすらわからなくなることもしばしば。

でも、期限も迫ってくるから、何とか形をつくっていく日々。

結局、僕の卒業設計は、迷いや葛藤をたくさん含んだまま、なんとか完成したのでした。

複数の大学の卒業設計が集まる展示会で、大西さんの卒業設計を見たとき、「素直だなぁ」と感じました。

やりたいことを素直に表現する力。

考える過程で失われることのない熱量。

大西さんの模型やプレゼンシートを見て、驚きや感動や羨ましさが混じったような気持ちになりました。

その後、大西さんの作品は、その年の卒業設計で全国三位、というところまで勝ち進みました。

作品名は『図書×住宅』。

かなり、影響、受けてます(笑)

 

最後まで読んで頂きありがとうございます☆