2019/01/03

シェアハウスの一冊『雪のひとひら』

[ シェアハウスの本たち ]

アメリカの作家であるポール・ギャリコによって書かれた『雪のひとひら』は、冬の静かな喫茶店でゆっくりと味わいたい作品だ。

はるかな空の高みで生まれた「雪のひとひら」。地上に舞い降りた彼女は、寒さの厳しい山々やこどもたちの声が響き渡る村、穏やかな湖や流れが速くて危険な川など、色々な場所を旅する。

季節が変われば、彼女は「水」の姿に変わり、旅は続く。美しい情景と共に描かれる出会いと別れ。その中でも、伴侶となる「雨のしずく」との出会いと別れは、彼女を大きく変化させる。

自身の存在に悩みながらも、ときには自分の意思で、ときには流れに身を任せて前に進む姿は、凛としていてかっこいい。旅の終わりに彼女がつかんだ「存在の意味に近づいた感覚」は、物語を旅した後、ぜひ彼女と一緒に感じて頂きたい。

少しネタバレになってしまうけれど、この物語は女性の一生を描いている。この世に生まれてからの冒険、成長の中での悩み、伴侶やこどもたちとの出会い、死の危険を伴う大きな事件、こどもたちの自立、そして自分自身の死。

常にそばにある温もりと孤独。喜びと悲しみ。動物や植物を擬人化するのではなく、雪(水)という純粋な存在を主人公としたからこそ、出来事や感情がストレートに伝わってくるように感じる。

また、雪、水、水蒸気と主人公がその姿を変えることも象徴的だ。ときには大きな川の一部となりながら、ときには水滴として自分の意思を貫きながら、素直に生きる姿は、僕たちも見習うべきかもしれない。

 

最後まで読んで頂きありがとうございます☆

 

今回ご紹介した本

雪のひとひら(著:ポール・ギャリコ)