2017/03/22

免疫系・内分泌系・神経系について。

[知識]

僕たちは、生物的な視点から捉えると、免疫系・内分泌系・神経系という三つの相互作用によってコントロールされています。

それによって、外部の環境の変化に適応することができたり、生体の内部環境を安定的に保つことができたりします。

ここでは、免疫系・内分泌系・神経系のそれぞれの特徴や機能について記載していきます。

免疫系について。

免疫系は、「自己」と「非自己」を判別し、「非自己」が「自己」に侵入することがないように、「自己」を守っています。

これは、「自己」と認識されない異物である「非自己」を攻撃する仕組みであり、この機能は白血球の仲間であるリンパ球(主にB細胞とT細胞)が担っています。

例えば、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)と呼ばれるリンパ球は、ウィルスに感染した組織や、突然変異によって生じたがん細胞などを溶解することによって、僕たちの身体を守っています。

このNK細胞は、心理ストレスが加わると活性が減少するといわれており、心理的・社会的な要因が、生物的な側面に影響を与えるといえます。

内分泌系について。

内分泌系は、身体の様々な機能の調節や制御のために、ホルモンを生成して分泌する腺や器官の集まりです。

ホルモンを生成する器官には、視床下部、下垂体、甲状腺、副甲状腺、膵臓、副腎、性腺などがあります。

ホルモンは、血液と共に体内を循環し、特定の組織に一定の変化を与えます。

内分泌系の情報伝達は、後述の神経系と比べるとゆっくりですが、血中にホルモンが残っている間は効果が続きます。

例えば、僕たちがストレスを強く感じたときには、ストレスホルモンであるアドレナリンなどが分泌されます。

このストレスホルモンの作用により、身体を危険から守る準備を始めることができます。

ストレスが解消されるとホルモンの分泌は止まり、身体は元の状態に戻りますが、ストレスが長期にわたる場合は、身体の疲労を感じるようになり、免疫系や神経系にも悪影響を与えることがあります。



神経系について。

神経系には、神経細胞(ニューロン)とそれを取り囲む神経膠細胞(グリア細胞)の2種類の細胞があり、様々な情報の伝達を行っています。

また、神経細胞は、樹状突起、細胞体、軸索の3つの部分から構成されています。軸索は情報を送信する側で、樹状突起は情報を受信する側です。(図1)

神経細胞

(図1:神経細胞の構造)

ニューロンとニューロンのつなぎ目をシナプスと呼び、ここにはシナプス間隙という隙間があります。

神経細胞が興奮(活性化)すると、興奮した神経細胞はその情報を軸索の終末に伝えます。

その終末には、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質を入れた顆粒があり、その顆粒がシナプス間隙に放出されます。

放出された神経伝達物質は、周囲の神経細胞の細胞膜にある受容体と結合し、その神経細胞を興奮させます。このように、神経細胞は次々に興奮して情報を伝えていきます。

また、神経系は、その解剖学的特性や機能的特性から、さらに細かく分けられます。(図2)

神経系

(図2:神経系の分類)

(1)中枢神経系と末梢神経系。

まず、神経系は、解剖学的特性から、中枢神経系(脳と脊髄)と末梢神経系に分けられます。

中枢神経系である脳はさらに細かく分けられますが、その中で、脳幹と視床下部という部分が、主として生体内の安定性(ホメオスタシス)の調整に関与しています。

また、視床下部は、自律神経系と内分泌系を制御しています。

さらに、脳の一部である大脳辺縁系は、摂食行動・飲水行動・性行動などの本能行動を調節しており、視床下部を介して自律神経系と内分泌系に影響を与えています。

(2)体性神経系と自律神経系。

末梢神経系は、機能的特性から、体性神経系と自律神経系に分けられます。

体性神経系は、さらに感覚神経と運動神経に分けられます。

感覚神経は、皮膚に加えられた刺激や、目・耳・鼻などからの刺激を中枢神経系に伝える求心性の末梢神経です。

運動神経は、中枢神経系から筋骨格系に刺激を伝える遠心性の末梢神経です。

また、自律神経系は、さらに交感神経系と副交感神経系に分けられ、一部に例外はありますが、両者は拮抗的に機能しています。

自律神経系は、基本的には意識とは無関係に機能していますが、喉の渇きや空腹感などは脳に伝わり意識化されます。

ほとんどの内臓器官は、交感神経系と副交感神経系の両方によって二重支配を受けており、その作用は相反しています。

交感神経系は心身の緊張に関連し、副交感神経は心身の弛緩(リラクセーション)に関連しています。

例えば、心臓は交感神経の刺激によって心拍数が上昇しますが、副交感神経の刺激によって心拍数は減少します。

また、例えば、大きな動物に襲われるといった生命を脅かされるような危機的状況を認知すると、交感神経系の興奮によりアドレナリンが放出され(視床下部→脳幹→交感神経系→副腎髄質→アドレナリン分泌)、血圧や脈拍の上昇などの反応が起きます。

心理的にも緊張や不安が起き、心臓がドキドキしたり、吐き気や震えを感じることもあります。

このような心身の緊張は、危機的状況での闘争や逃避といった、個体の生存に必要な反応を生み出すものではありますが、心身に過度の消耗をもたらすものでもあります。

長期間、このような状態が続くと、内分泌系や免疫系にも悪影響を与えることにもなります。

また、想定外の大きさで心的外傷(トラウマ)的なストレスがかかると、その時点でのこころの構造では対処できず、一時的な感覚麻痺や記憶障害などが起きる可能性もあります。

まとめ。

僕たちは、このような自動化された生存のメカニズムを進化させて、危機を乗り越え、長い歴史を生き抜いてきたといえます。

現代社会においては、大きな動物に襲われるような生存の危機を感じることは少ないかもしれませんが、様々な心理的・社会的な危機に出会うことは多くあります。

自律神経系は、現実の危機と想像上の危機とを判別することはできません。

つまり、大きな動物に襲われるような現実の危機も、「仕事を失敗するかもしれない」という想像上の脅威も、同様に交感神経系に影響を与えることになります。

身体とこころは相互に循環的であるので、こころの問題は、自律神経系に影響を与え、内分泌系や免疫系を通して身体に障害を引き起こす可能性があるわけです。

そのため、想像上の危機とどのように付き合っていくか、また、どのように対処していくか考えることは、身体とこころの健康にとって大切であるといえます。

 

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